川本宇之介は横尾義智をどう意識していたのか?
川本宇之介は口話教育の普及に尽力し、聾唖児のみならず、成人聾唖者にも口話を使わせようと腐心していた時期もありました。
川本宇之介の著書の一つである「聾教育学精説」では口話と手話の長短について語っており、口話の短所よりも手話の短所の方がリスクが大きいと指摘しています。
横尾義友は手話教育を受けており、昭和9年から昭和21年まで村長を務めていました。村民とのコミュニケーションは専ら筆談であり、手話通訳は妻にやってもらい、代読は助役にやってもらうという使い分けを上手くこなしていました。
手話教育を受けた聾唖者が村長の務めを果たしているという事実は口話教育を広めたい川本宇之介にとっては好ましくない状況である事は確かと思います。かといって、横尾義智を批判する事は聾唖者達を敵に回す事になるのは川本宇之介にも理解できる事であり、殆ど、何も出来なかったかも知れません。
ある意味、横尾義智が村長を務めていた事は当時の聾唖者達にとっては希望であり、憧れでもあった為、川本宇之介の干渉をろう社会を護る一つの力となっていたかも知れません。
参考文献
- 【川本宇之介の生涯と人間性】
- 【聾教育学精説】
- 【小黒むらおさ】
- 【藤本敏文】
- 【大家善一郎の回想】
- 【Deaf Life Japan 2巻】
- 【日本聴力障害者新聞縮刷版1巻】
- 【聾唖界】
- 【吉川金造伝】
0コメント