ヘレン・ケラーが昭和23年に秋田駅に着いた時の様子
ケラー女史昨夕秋田を通過
懐かしむ秋田犬の地
花束をおくる少女に頬ずり
幸福の青い鳥を胸いっぱい膨らませて日本の隅々におる身体の不自由な人々を救うため全国行脚を続けている世紀の聖女ヘレン・ケラー女史は札幌から酒田への途中20日午後6時45分秋田駅に到着した。
この日、この感激の時にまみえんとホームには秋田県立盲ろうあ学校の生徒さんや秋田県身体障害者連盟の人々が互いに手をとりあいケラー小母さんに奉げる花束を囲んで集まり、また11年前女史に秋田犬「剣山号」を贈った小笠原一郎氏もみえた。
秋田軍政部キーン部長を始め、渡辺副知事、京野県議長、児玉市長、県民生委員ほか秋田女子実業学生など一般市民も交わり到着を待っているうちにケラー女史の列車は少雨をついてホームに滑り込んだ。横文字の入った番傘を持ったトムソン女史に片腕を組まれたケラー女史は黒スーツに水玉の大きな紺のリボンを白髪の交えた頭にのせ69歳とは思えぬ元気な頬を輝かせてデッキから降りた。
まず、キーン部長が挨拶の後、トムソン女史の伝えで
「小笠原さんいませんか?」
と呼ぶと小笠原さんは大きな身体で群集をかき分けケラー女史に
「ようこそ、お元気で」
と握手を求めればケラー女史は両手で小笠原氏の手を握り、身体をさすっての感激の場面が人々の胸を圧した
昭和12年女子来訪の折、秋田県警察部勤務の同氏がケラー女史に秘蔵の秋田犬「剣山号」を贈ったのであった。
やがて、秋田県立ろう学校6年渡辺勝子さん(13)が香り高いダリアの花束を贈れば、ケラー女史は
「ヨウカツコさん」
と少女を抱きしめ、頬ずりしていたわる。
ケラー女史は
「秋田の皆様にお目にかかれて嬉しいです。私は11年前、立派な秋田犬を頂きました。私にとっては一生の大きな思い出です。秋田に泊まれなかったことが本当に残念です。」
と汽車と共に少雨をついて酒田へ向かった。
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