口話教育とろう者のアイデンティティについて

 6月17日(日)、秋田県立聾学校同窓会創立80周年記念式典に参加しました。式典の休憩時間に昭和31~36年の卒業生に西川はま子の事を知っているか、聞き回りました。

「西川はま子先生なら、知っている。昔、口話教育は厳しかった」

「西川はま子先生の講演?見たよ。お父さんが口話教育に厳しかった。」

「西川はま子先生?知っているよ。昔、口話教育で大変だったよ。」

等と手話で答えました。

 西川はま子先生を知っていると答えたら、すぐ口話教育は厳しかったと口を揃えて話していました。

 当時の聾学校の生徒達にとっては西川はま子を口話教育のロールモデルとして見ており、自分は西川はま子先生みたいに上手く話せることは難しいと思い、ろう者として、手話を第一言語として生きていくアイデンティティを固めるキッカケの一つになっていたのではないか?と思いました。

 西川はま子の講演を見たからこそ、ろう者としてのアイデンティティをいち早く固めることが出来たかも知れません。聾学校の先生、生徒の保護者の想いとは正反対の道を進めることになっており、ろう者として誇らしい姿を見せられました。

 今はろう者としてのアイデンティティが固まりにくくなっているなと感じています。手話が言語として、少しずつ認めつつあるからこそ、当たり前と思っているから、意識し辛いかも知れません。昭和31年に聾学校にいた生徒達は西川はま子という口話教育のロールモデルを見たからこそ、ろう者としての自覚をいち早く目覚めた結果になったかも知れません。