川本宇之介の遺稿『人間の教師』

 川本宇之介がこの世を去ったのは昭和35年3月15日であり、『人間の教師』が発行したのは昭和35年7月13日であり、川本宇之介の死後4カ月後に発行した事になります。この本の内容は聾教育ではなく、釈尊、孔子、キリスト、カント、ソクラテス、親鸞、ペスタロッチの七人の聖人についての見解を述べていることになっていましたが、釈尊、孔子、キリスト、カントについては書かれており、親鸞について書かれている最中にこの世を去ることになった為、親鸞は途中になっており、ソクラテスとペスタロッチについては書かれていません。

 川本宇之介が自らの死期を悟り、七人の聖人について調べようとした理由は何だったのか、気になっています。自らの歩みを振り返るような気持ちで書いたのではないかとする気がします。

 死を目前とした川本宇之介はどの様な心境だったのか、何を想ったのか、自分がやってきた事は正しかったのか、間違っていたのか、自分は何の為に生きてきたのか、様々な想いが頭の中をグルグルと回っていたのではないか?という気さえします。