昭和12年6月、ヘレン・ケラーが秋田県立盲唖学校訪問及び秋田県から出発の記事
皆さんの心は常に明るい
ヘレン・ケラー女史
盲唖学校を訪う
秋田とお別れの16日、ヘレンケラー女史は午前11時から県立盲唖学校を訪れた。薄幸の生徒130名は中山校長以下職員と共に出迎え、父兄及び200余の婦人達が講堂に整列、同校飼育の◆や愛犬エスを愛撫しつつ、講堂の座席につけば、唖生5年生越後谷トシ子さんが歓迎の挨拶を述べ、
「お忙しい中をよく私共の学校へおいで下さいました。神様とご一緒のケラー先生を迎え、私共の世界は明るくなりました。私達は今日の日を忘れずにいつまでもいつまでも記念いたします。」
続いて5年の唖盲生湯田文男君が花束を奉げて
「あなたは私共の心です。」
とたどたどしく呼びかけるとケラー女史は少年を抱いて頬ずりし、列席の婦人達はこの◆◆な場面に涙ぐむのだった。更に盲生森川イクヨさんが秋田大◆を贈り
「永く秋田の地をお忘れなく」
と結べばケラー女史は
「皆さんの暖かい美しい歓迎に◆◆◆の言葉もありません。皆さんの心に輝しい灯が照ております。いくつもいくつも併せ、世の中を明るく致しましょう。心眼の◆きは肉眼の開きに勝るとも劣らないでしょう。私共は幾多の困難に遭遇しようとも神様の守りを信じて疑わず力を併せて困難を倒した。」
ケラー女史の出発
トムソン嬢の病気休養から出発を延期していたヘレン・ケラー女史は16日午前11時半過ぎ、自動車で秋田駅に至り、中山盲唖学校長の案内で多数のが送り人の詰めかけた待合室を潜り抜け、駅長室で鈴木市長、伊藤学務部長、井上本社長、本間知事夫人、ハリソン夫人、その他に対し握手を求めて
「秋田には大きな愛着を感じます。皆さんには大変お世話を頂きました。ありがとうございました。」
と繰り返し繰り返し、感謝の言葉を述べ、岩橋夫妻に労われて路線橋をわたり、二等車に乗車してからまたも幾度も幾度も感謝の意を表し、小笠原一郎巡査が連れてきた秋田犬の頭を窓口で撫でまわし、頬ずりし、トムソン嬢がまたこの犬の頭に素晴らしい大きなキスを一つくれて55分列車はホームを滑り出し、青森へ向かったが、ホームは盲唖学校職員、教会の人々をはじめとし、多数見送り人があって、しばらくは身動きもためらうほどだった。
【秋田魁新報 昭和16年6月17日(木)夕刊2面】から引用
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